Research
研究概要
薬理学研究室では、薬物依存、行動嗜癖、うつ病などの精神神経疾患の病態メカニズムを解明し、その治療ターゲットの探索を進めています。
また、依存性薬物の有用性にも注目し、その作用機序を明らかにすることで、認知記憶障害に対する新たな治療的介入法の開発を目指した研究を行っています。
以下に代表的な研究内容を紹介します。
(それぞれの論文内容の簡潔な説明はPublicationsをご参照下さい)
Ⅰ ストレスによる薬物欲求増大メカニズム
ストレスは一度断薬した依存性薬物への欲求を増大させ、再使用を招くため、依存症治療の大きな障害となっています。
私たちは独自の動物モデルを用い、心理社会的ストレスが薬物欲求を高める仕組みを、報酬系に関わる脳内神経回路の観点から解明しようとしています。
代表論文:Saito et al., 2024; Chu et al., 2021; Wada et al., 2020
Ⅱ 行動嗜癖の病態メカニズム
ネット、ゲーム、ギャンブルなどへ過度に没頭する行動嗜癖が大きな社会問題となっていますが、その脳内メカニズムは未解明な点が多く残されています。
私たちは、マウスがランニングホイールを執拗に走る行動をモデルに、特定の行動への過剰な没頭を引き起こす脳内機構の解明に取り組んでいます。
代表論文:Niitani et al., 2024; Zhang et al., 2022
Ⅲ 認知記憶の仕組みと感覚障害による記憶障害のメカニズム
記憶は生存に不可欠な機能であり、海馬の関与が知られていますが、私たちは内側前頭前野も認知記憶に重要であることを示してきました。
さらに、嗅覚障害が記憶障害を引き起こすこと、ニコチンがその改善に関与する可能性を明らかにし、作用メカニズムの解明に取り組んでいます。
代表論文:Izumi et al., 2025; Esaki et al., 2024, 2025